タンポポ一輪
今日の火葬の予定を見て
見覚えのある苗字だな。と思いながら棺を受け取り、台車に載せる。
フタをあけて皆さま、最後のお別れでございます。
フタをあけた瞬間、あ!〇〇さんだ!すぐわかった。
私は火葬場に来る前に病院で働いてました。
その時に担当していた患者さんだったのです。
遺族も見覚えのある人ばかり。
火葬が始まったあと、私は息子さんに声をかけた。
あー!よく見たらホントだ!と私に気づいてくれました。
オヤジはねアンタを孫だと思ってたんだよ。
孫は東京にいるのに患者さんは今日は孫〇〇がお見舞いに来てくれたんだよ。と報告していたらしく
どんな人なんだろう。とニセモノ孫のアタクシをみんなで探していたらしい。
ホンモノの孫にお会いしたがたしかに私に似ていてみんなで爆笑した。
別れは悲しいけど
また会おう。と笑顔で別れることって
難しいけど 素晴らしい。
じいちゃんは生きてる間もアンタに世話になって死んでからも世話になるんだね。と息子さんは言った。
ここまで〇〇さんに関われて私も幸せです。と答えた。
お骨になるまでの間。
火葬炉の裏から外に出てタバコを一服。
足元には桜の散る風に揺れるタンポポ。
火葬炉の焼き加減を見るのぞき窓から
タンポポを一輪。
入れてあげました。